チヤホヤされてますが童貞です
頭を抱えてソファに縮こまっていると、ガチャリと鍵の開く音がした。

「うっ……」

（凛……帰ってきた…）

スタッとソファに普通に座り、スマホを手に取る。何気ない様子を装い、ドアが開くと同時に聞こえる『ただいま』に対し、『おかえり』と返した。

「晩ご飯、きすの天ぷら服部さんから貰って…」
「っ！」

過剰に反応しかけては、ハッとして平然とする。

（服部さん……絶対に俺をからかって楽しんでる……）

「服部さんとたまたまマンションの入り口で会って…」
「……そっかぁ。お礼の連絡しなきゃ」
「……綾斗、顔赤いのは…風邪？」
「っ……いっいや？ そっそんなことは…。ちょっと部屋が暑いかも！」

『人気俳優』とチヤホヤされている人間とは思えないほどの動揺感に自分で笑いたくなった。

「………いや、ごめん。実は理由も知ってて言うんだけど…」
「……なに？」
「綾斗……ぎこちないよ？」
「…………重々承知しております…」

予め作っておいた味噌汁を盛りながら、はぁ…とため息をつく。次にご飯を盛り、頂いたきすの天ぷらと惣菜を広げてご飯支度を済ませた。

「ねぇ…凛…撮影の練習…付き合ってくれない……？」
「うん…。……私も頼みたかったし…」
「………そ…う…」

それからは気まずくて会話が少なくなり、静寂の中で食事をとった。
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