チヤホヤされてますが童貞です
一方、綾斗はというと、『次の休みっていつ?』と問うのに四苦八苦していた。

(わぁ…どうしよう…。なんか…訊いたら…『早くエッチしたいです』って言ってるようなもんじゃね…?)

凛ロスで苦しんでいるにも関わらず、触れれば襲いたくなってしまう。自分の性欲の強さを憎たらしく感じる夏の夜。

(………ここは気楽に…磨いてきた演技力を総動員させて…)

深く呼吸をして、両頬を掌で押しつぶした。
サッと紳士的な表情に切り替えて…。

「お風呂、先に入って良いよ」

と、本当に訊きたい事とかけ離れた内容で話しかける。

「え、先いいの?」
「うん。俺、これから台本読みするし」
「そっか。わかった」

(……彼女が出来てもヘタレなのに変わりないんだな…俺…。)

何気なく演技なら発せられるセリフ。素の自分だと何気なく、なんていうのは無理だった。
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