チヤホヤされてますが童貞です
君との時間は甘くて酔いそうですが…

役者の仮面

初体験日が決まると、不思議なもので…。

「おやすみ。凛」
「うん、おやすみ。」

割とドライな調子に振る舞うスキルだけが伸びていった。

(平常心!平常心!)
(何気ない顔!何気ない顔!)

中身は勿論のこと落ち着きがなく、慌ただしいのだが…。

一日、二日、三日。

日付が変わるたび、時間が進むたびに2人は役者として成長を遂げるという何とも可笑しな状況に陥っていた。


1日1回と決めたキスはまるで映画やドラマのキスシーンのよう。

(綾斗…余裕そう…)

役に入りきって欲情から逃亡する綾斗にしっかりと気づいている凛。

「……もっと…」

と、一言おねだりして綾斗の平常心をグラつかせようと、負けじと女優スキルを発揮させている凛にしっかりと綾斗も気付いているのでお互い様な空気感が流れていた。

「……いいよ…。満足するまで…」

などとドラマっぽく耳元で囁いては、役者の仮面を身につけて、ちゅっちゅっと角度を変えて何度も何度もキスシーンさながらのキスを繰り返すが…。

(もう無理…!)

我慢できずに離れ、『今度こそおやすみ!』と放つことで強引に終わらせ、部屋に閉じこもる綾斗。

(今日は私の勝ち〜)

変に競い合う謎の遊びに、変にハマりそうになっている凛だった。


それから綾斗は、部屋に1人になると『気持ちよくなりたい』という快楽を求める気持ちとの第2ラウンドが始まる。

そのことを、凛はつゆ知らず。

「………」

(…凛のバカ……)

毎回ものの見事に惨敗して、声を殺しながら愛しい彼女を思い浮かべて抜いていることも、凛は全く知らない。
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