生贄の花嫁      〜Lost girl〜
―悠夜side—

泰揮が食事を作っているのを半ば強制的に手伝わされている私。いつもなら1人ですべてやるのになぜ私が……

「私に何か用があるから手伝わせたのでしょう。」

「あら、鋭いわね。」

「貴方と何年の付き合いだと思っているのですか?貴方のことなら大体のことは把握しています。」


「琉生クンのことよ。ずっと気になっているのよ。なんで琉生クンはこの屋敷に入れたのかしら……キズ…いえ柚ちゃんがここに入れたのはまだ納得できるけど、琉生クンの許可を私たちはしていない。どうやって玄関までたどり着いたのかしら…?」




ここの結界の管理をしている泰揮でさえ原因が不明。今までこのようなことはなかったので私としても腑に落ちない点ではある。


「あの時言っていた亀裂が何か関係あるかもしれないですね……。」

「だとしても、柚ちゃんが結界に亀裂を入れるほどの力を持っているとは思えないわ。」




仮に柚に亀裂を入れるほどの力があったとしたら誰かが彼女に手を貸していることになる。琉生が言っていた黒鬼院の仕業か…?



「お二人ともだいぶ険しい顔をなさってますけど、どうかされたんですか?」

「貴女には関係のないことですよ。」

「花月チャン、琉生クンがここに来た日のこと、覚えている?」
「まあ、はい……。」



少し俯く彼女。あまり思い出したくない過去なのだろう。



「あの時、琉生クンの体に何か変化はなかった?例えば、火傷していたとか不自然な傷痕があったとか何でもいいんだけど。」

「不自然な傷痕…ですか?」

「ええ。どんなことでもいいの…思い出せない?」



しばらく考え込む彼女の姿でさえ愛おしく感じてしまうなど私もだいぶ不埒になったものだ。


「あ…。」
「思い出したの!?」

「不自然な傷というか…紋章なら。」


「紋章…ですか?」

「はい。首の後ろに赤黒く濁ったような色の紋章がありました。そこだけ少し腫れあがっていたので少し気になっていて…。」


「そう…わかったわ、ありがとう。ちょっと彼に聞いてみる必要がありそうね…。」


「僕に用?」

「あ、琉生くん、部屋で待っててよかったのに…。」

「花月ちゃんに重たいグラスを持たせるわけには行かないから来たの。そしたら僕の紋章の話してたから聞かれる前に言っておこうと思って。」



「では改めて聞きます。その紋章を見せてもらえますか?」

「本当は教えるの禁止だけど……僕のこと助けてくれたから特別に教えてあげる。」




琉生がパーカーを脱ぎ私たちに見せた襟足には花月さんの言っていた通り赤黒く濁ったような色の紋章があった。


「これは…黒鬼院様との契約印。僕を拾ってくれた時に刻まれた下僕としての証。」
< 107 / 313 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop