生贄の花嫁      〜Lost girl〜
―輝石side—

「キズ!」

「柚…。」


なんでこんなところにキズが…?しかも、聖先輩、今柚って……


「あら、言ったでしょ?私は柚なんかじゃない。キズよ。」

「なんでおまえがここに…。」


「貴方たちがなかなか返ってこないから様子を見に来たのよ。黒鬼院様もかんかんよ。さ、戻るわよ。」



キズが俺の腕をつかみ引っ張る。その手を振り払い花月の前に立つ。



「俺らは…戻らない。」
「何を言っているの!?まさかその子に情が移ったんじゃないでしょうね。」

「俺らはもう…花月の味方になったんだ。もう嫌なんだよ……次々と女を攫うのは。」


「私たちは黒鬼院様に生かしてもらってるのよ…?そんなこと言っていられるわけ……。」


「キズさん、貴女も分かっているでしょう…?黒鬼院様の悪行を。」


「分かってるわよ……でも、黒鬼院様に背くわけにはいかないの。私には…目的があるんだから。」



「それが前に言っていた復讐ですか?劉磨さんたちを苦しめるって……。」


「ええ。そのためにお前を連れていく。」



キズの姿が消えた。キズの十八番は瞬間移動。



「気をつけろ。キズの十八番の瞬間移動だ。」

「気をつけろって言われても…。」


「花月さん、私の後ろにいてください。」
「はい。」


「そんなんで守ったつもり?隙だらけじゃない。」



高く嘲笑うキズの声が響く。相変わらず気分を悪くしやがる。


「ここだ……!」


「きゃーー!」

「花月!」





花月が黒い靄のようにものに吸い込まれていく。



「いま助けてやる。」



皆で花月を引っ張る。しかし、どんどん靄は花月を吸いこんでいき次第に苦しい表情を浮かべる花月。



「ああっ!」


「そうそう、言い忘れてたけど無理に引っ張るとその子の体に電流が流れるから。強く引っ張ったら死んじゃうかもね。」




「キズ、なんでこんなひどいことを…。」
「命令だからよ。黒鬼院様に白梨花月を攫って来いと言われたから……その任務を遂行するだけ。」


「痛い!」


「花月さんから…手を放してください。」



納得がいかなかったが、これ以上花月に苦しい思いをさせるわけにもいかず手を放した。
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