生贄の花嫁      〜Lost girl〜
10個のコップに麦茶を注ぐ。その間もさっきの賑やかな声が頭の中で響いていた。



「はあ……。」
「何、ため息ついてんだよ。」

「り、劉磨さん!?なんでここに……。」
「10個のコップを1人で持てるわけないだろ。手伝いに来たんだよ。」

「あ…ありがとう。」



「それより、何でさっきため息ついていたのか教えろよ。」

「な、何のこと?私別にため息なんか……。」


「俺に嘘が通用すると思うなよ。さっき泣きそうだって聖が言ってたからお前が落ち込んでんのは分かっているんだよ。なあ、教えろよ。」


「い、嫌だ。」

「なんで…?」

「だって……バカみたいだから……あんな風な気持ち。」

「はっはーん、さてはお前、柚にヤキモチ妬いてんだろ。」

「な…!」

「ん?」




劉磨さんがにやにやと笑っている。変な時だけ私の気持ち察するんだからずるいと思う。




「ヤキモチ妬いちゃ悪いですか!?」
「別に~、何でヤキモチ妬いたの?」


「そ、それは……柚さんが戻ってきたから皆柚さんのことで頭いっぱいで……だからもう私は必要ないのかなって……。もう用なしになっちゃうのかな……って思ったから。」  



「ぶふっ!」
「わ、笑わないで…!」

「いや、悪い悪い。花月がヤキモチね。しかも寂しくてかよ。」


「別に寂しくなんか……。」


「ふ~ん……。じゃあ、俺戻るわ。」
「え…?」


「寂しくないなら俺、いらないだろ。」




ドアを開け劉磨さんがキッチンを出て行ってしまった。





途端に寂しさが私を襲う。







「嫌だ、待って!」






慌てて後を追いドアを開けると劉磨さんに抱きしめられた。

「やっぱり寂しいんじゃん。」
「意地悪……。」


「俺らはさ、たしかに柚のこと大好きだけど、それと同じくらい花月のことも大事に思っているし、ずっと一緒にいたいと思ってる。だからさ、つまらないヤキモチなんか妬くな。」

「劉磨さん……。」


「ほら、飲み物持ってくぞ。あんまり遅いと俺が何かしてるって誤解される。」


「うん…。」
< 139 / 313 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop