生贄の花嫁      〜Lost girl〜
「あー、全然わからねえ。」

「さっきのみなぎった力はどこに行ったの…?」

「これでも知識は頭に入ってきてるんだ。でも…実際に問題を解くときって花月の解説ノートみたいに分かりやすく書かれてるわけじゃねえし、間違ってるかもって不安があって自信が持てねえ。」

「劉磨さん……らしくない。劉磨さんってもっと無鉄砲で単純な人じゃなかったっけ?」
「俺のコト馬鹿にしてんのかよ。」


「うん。馬鹿だとは思う。でも……ただの馬鹿じゃないでしょ。何事にも無謀に挑戦できて、感情のままに動ける人だと思っている。そういう潔いところって誰もが持っているものじゃないから、すごいと思うよ。」


「お前は人を乗せるのがうまいよな。」
「そうなの……?」


「ああ。俺らに媚びるわけでもなく自分に都合がいいように仕組むわけでもないだろ。」

「それはたぶん……人との距離感がいまいちまだ分からないからかもね……。ここに来てからたくさんの人と話すようにはなったけれど、普通っていうものは分からないし、まだ少し…いろいろ考えてしまうことがあるから。」



「それもそうだな。あんだけのことを経験して何もねえっていうほうが気持ち悪いだろ。お前は前よりも十分人間らしくなったよ。」

「ありがとう……劉磨さん。」

「よし、じゃあ勉強再開するぞ。ぜってえ赤点回避だ。」




乗せるのがうまいのは劉磨さんたちの方だよ。いつも私の中をきれいにしてくれる。不安が少しずつ溶けて心が軽くなる。羨ましいよ…その強さが。
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