生贄の花嫁      〜Lost girl〜
―奏side―

「さあー、勉強だー!」

「奏はいつも元気だね。」


僕が元気にしているのは花月が落ち込んでいるみたいだから。もっと笑ってほしいから元気な僕を見せたい。




「俺も元気だぞ…。」
「うん……。勉強頑張ろう。」







「花月、ここの問題分からない。」

「ここは、さっきの公式を使うんだけれど、計算を間違えるとその後の計算も間違えちゃうから……。」

「そうか……ありがとう。こっちの問題は…?」

「こっちは、さっき出た答えを使って……」




花月が聖をずっと教えていて、すごくこの場に居辛い。聖も聖なりに花月を心配してたくさん質問してるんだろうけど、やりすぎだよ……。



「聖さん、本当に苦手なんだね。」

「理系は苦手だ……。答えが1つしかないから。」

「それだと…国語と英語は得意なの…?」


「文章問題は得意だ。いろんな答え方があるし面白い。」

「そうなんだ…。」


「ぼ、僕は全科目得意だよ!」



何を言っているんだ、僕は。こんなのまるで嫌な奴じゃないか。


「奏は苦手なことなさそうだもんね。あ、こういう言い方は良くないんだよね……。」

「僕も苦手なこと……あるよ…。」




たしかに僕は基本的にできることが多いけど……『好きな人を振り向かせたい』っていう1番の望みがかなわない。


「でも、今は勉強会だから、いっぱい勉強しなきゃね。」
「うん。」

「……。」
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