生贄の花嫁      〜Lost girl〜
――教室――
「今日からこのクラスに転入する白梨花月さんよ。まだ、慣れないことが多いから手伝ってあげてね。席は…」

「先生~、僕の隣が空いてます!」
「そうね、じゃあ桃瀬くんの隣に座ってもらえる?」

机と机の間を通り言われた席へと向かう。好奇の視線とひそひそと囁く声。

「花月、あまり気にしないで。ほら座って座って。」
「ありがとう…。」

「奏の隣、大変だろうけど頑張れ…。」
「大変…?」

「奏は優等生だから隣になるといつも先生があててくる。」
「そう、僕、優等生!」

隣には桃瀬さん。後ろには劉磨さんと聖さんがいて……なんだか、囲まれているみたいで安心する。

「は~い、皆静かにして。HR中よ。」
「ごめんなさ~い。怒られちゃったね。」

てへ、と笑って私の顔を見る桃瀬さん。これから楽しそうな生活になりそうで良かった…。
―――――――――――――――――――——————
無事にHRが終わり授業が始まると聖さんが言っていた通り先生に何度も名前を呼ばれた。

「じゃあ、問2の問題、桃瀬…の隣の白梨、答えろ。」

「うわ!始まった。先生の生徒いじめ。転校生かわいそ~。」
「花月、難しかったら奏にパスしろ…。」

「どうだ?難しいか?なんなら桃瀬にパスしても…」
「72分の67。」

「え…?」

「3つのサイコロを投げた時、和が7になるのは15通りでその確率は216分の15、つまり72分の5になります。この問題は和が7にならない確率を聞いているので余事象を用いて1-72分の5で答えは72分の67です。」

「正解…。」


「転校生すげ~!。」
「先生悔しそう~。」
「うるさい、次はお前ら指すぞ。」

「花月…お前、頭いいのか?」
「頭がいいかは分からないけれど、家で家庭教師に教えてもらっていたから……。」

「うわ、僕にライバル登場!?どうしよう~。」

桃瀬さん、どうしよう~って言っているけどなんだか嬉しそう。問題が解けると皆、すごいと褒めてくれる。こういうの…悪くない。

「優等生2人だと俺ら辛い…。」
「聖はいつも真ん中だもんね。劉磨は赤点ギリギリだし。」

「うるせえ、奏。」
「なに、劉磨起きてたの?珍しい。」

この席はすごく賑やかだ。今まで勉強は森山と2人きりでやっていたから大人数でやるのは新鮮で楽しい。

「僕、絶対負けないから。覚悟してね、花月!」
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