生贄の花嫁      〜Lost girl〜
「思わぬ方向に進んだね、花月。」

「うん…そうだといいな。少しでも何かきっかけがあれば、楓ちゃんも過ごしやすくなるかなって思っただけなんだけどね……。」



「あいつ、お前みたいになりたいって。」

「楓ちゃんが…私みたいに…?」
「よかったな、妹ができて。」

「うん…。それなら尚更、もっともっと支えてあげたいね。」



「あらあ、楓チャン、泡立てるの上手ねえ。お家では料理してたの?」
「いや、今時料理くらいできるのが普通だと思いますけど。」

「まあ、お前にならキッチンの利用を許可してやる。火事も起こさなそうだしな。」




お菓子で笑ってもらおうと思っていた作戦は思わぬ結果を招いたけれど、少しだけ楓ちゃんが見えてよかった。


これなら少し安心かな…?


「花月、何でそんなにニコニコしてるの…?」
「楓ちゃんは可愛いなって。」

「恥ずかしいこと言わないでよ、バカ…。」
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「美味しかったですね、お菓子。」

「当然でしょう。私が作ったんだから。」



「少しは…楽しめた…かな…?」
「別に最初から楽しくないなんて言った覚えないけど。」

「意地っ張りな奴。素直に言えばいいんだよ。顔色を窺わなきゃいけねえ奴はここにはいねえんだし、お前がどう思おうとお前の勝手だろ。」

「は、恥ずかしいのよ、そういうの言いなれてないもの。」

「ならここで少しずつ慣らしていけよ。お前が今まで言いたくても言えなかったこともぶつけてみろ。そうやって人とコミュニケーションとって学んでいきゃいい。家で教えられたダメなことなんか外でてみりゃ大したことないもんだったりするんだからよ。」



「……うるさいバカ……。」

「おう、言うじゃねえかよ。」
「あんたが言えって…。」

「で、俺は今本当に死ぬほど怒ってると思うか?こういうのが人と慣れ合うってことじゃねえの?人の顔色見て生きてくことも時には必要だけど少しずつ覚えていきゃいいんだ。オンとオフの使い分けを。」

「私、部屋戻る。」


「あ、楓ちゃ……」
「大丈夫だよ、花月。姫、少しだけ嬉しそうな顔してた。本気でぶつかってきてくれる人が現れたんだから。それに…今は少し1人になって考えたいことがあると思うしさ。」


「うん…そしたら、私たちは片づけを……。」



「あら、花月チャン、アタシが用意した服着てくれないのかしら…。」

「着なきゃダメですか…?」

「今回は皆でコスプレしようかって考えてたんだよ。僕たちももちろんコスプレするよ。だから、今日は一緒にハロウィンパーティーできたらいいなって……。せっかくなら特別な日にしたいから。」

「そうだよね…せっかくなら皆で楽しまなくちゃ勿体ないよね。うん、着てみます!」


「じゃあ、脱衣所で着替えてきてくれるかしら。」
「はい!」









「奏、よくもまああんな嘘を土壇場で思いつきましたね。」
「嘘じゃないけど。皆の衣装を用意したのは本当だよ。」

「で、では私たちも……?」

「もちろんコスプレするんだよ。楽しいパーティにするために。」




「あらあら奏クンに1本取られちゃったわね。」
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