生贄の花嫁      〜Lost girl〜
「花月さん、こちらをどうぞ。」


「悠夜さん……ありがとうございます。」




悠夜さんに連れられ大広間へとくると劉磨さんが毛布を持って待っていてくれた。悠夜さんに渡された薬を飲みソファーへと横になる。



「おそらく、これで妊娠は防げるかと……何か体に異変を感じるようであれば必ず言ってください。」


「私は……吸血鬼になるんですか……?」

「……はい、おそらくは。泰揮がどの程度のDNAを貴女の中に入れたのかは分かりませんが、吸血鬼化を防ぐことはできないでしょう。」




不思議だな……いつかは吸血鬼になるって分かっていたはずなのに……人間じゃなくなることが怖い。


「花月、怖いか…?」
「ううん……大丈夫。」




震える手を必死に抑えて毛布の中へと隠す。


「今の貴女に酷な質問をするようで申し訳ないですが……貴女は聖と泰揮、どちらを選びますか……?」

「……私の心は…聖さんにあります。泰揮クンのことは……選べません。」



そう。泰揮クンと体を重ねてしまったことは事実。覆すことのできないこと。でも……私の中にあるのは聖さんへの思いで……それ以外の人を考えることはない。



「だそうですよ、聖。」



悠夜さんの言葉に顔を上げると悲しそうな顔をしていた聖さんが立っていた。




「俺らに偉そうなこと言える立場なんかねえけど、あれだけ恋愛意識のなかった花月がお前を選んだんだ。後は任せる。」
「ああ……。」





「聖さん……本当にごめんなさい。貴方を好きだと言ったのに……。」

「…花月、俺は……別に怒ってない。」

「嘘……さっきあんなに怒鳴ってた……。私のことも…嫌いになったでしょ……?」
「…そんなことない!俺は……俺の気持ちは変わらない。花月が俺を望んでくれるなら俺は……ずっと側にいる。お前を好きだって気持ちは無くならない。」



「私は……あのとき選べなかった。泰揮クンの思いを断ってしまったら泰揮クンを傷つけてしまいそうで……でも…1番許せないのは……簡単に身を委ねてしまったこと……。」



「…花月……聞いてくれ。高等部を卒業したら、結婚しよう。たくさんキスをしてセックスもして、時を紡ごう。」
「私には…聖さんと結婚できるような資格……。」


「…俺はお前とずっといたい。高等部を卒業するまでは今まで通り家族で、友達でいよう。資格なんかいらない。俺は……お前がいなきゃ楽しくない。」



「私……側にいていいの……?」

「…当たり前だ。」
< 232 / 313 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop