生贄の花嫁      〜Lost girl〜
―翌日―

目が覚めるといつもよりも体が重く軋むように痛かった。


まさか……もう吸血鬼化が始まったのかな…?



思うように体が動かずベッドから起き上がることもできず、体が浮いているような感じがする。

誰か……呼ばなきゃ。聖さん……来てくれないかな……?




ガチャ



「…花月、大丈夫か…?」
「聖さん…どうして……?」

「…だって、今俺のこと呼んだだろ…?」



今……私、声に出していたっけ…?心の中で思っただけで…来てくれたの…?




「…花月の考えていること…全部感じる。もしかして…もう吸血鬼化が始まっているのか……?それなら…これは能力…?」



能力……?それっていいことなのかな……?


「…悪いことじゃない。吸血鬼は基本的に何かしらの能力を持って生まれてくる。悠夜の記憶操作や俺の炎なんかはそうだ。」



そっか……。皆と同じになれるんだ。



「…今悠夜も呼んでくるからちょっと待っててくれ。」



あ……聖さん、行っちゃうのか…。寂しい……。



「…寂しいか…?」
「え、あ……。」




思ったこと…全部伝わってしまうのか。これは少し恥ずかしい気がする。



「大丈夫…だから…。」
「…すぐ戻る。」
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「それで、初期症状としては倦怠感、体の痛み、そしてテレパシーの能力という所ですか。」
「はい……。」


「思っていたよりも吸血鬼化が早いですね。この分だと今晩には飢えが始まるでしょう。それに、もしかすると花月さんは複数の能力を持つことにもなるかもしれません。」
「…それって……」




飢え……私も人の血を飲むようになるのかな……?雪乃やお父様、お母様、使用人たちみたいに、また誰かを巻き込む。それを見ている側じゃなくて命を奪う立場になるんだ。


そんなの…辛いな。



「貴女が考えていることも可能性としては有りうることではあります。ですが……貴女が自身の能力や飢えをコントロールすることできれば問題ないことです。」

「はい。」

「さて、これ以上長居すると貴女にも負担をかけてしまいそうなので私は部屋に戻ります。何かあったら聖に言いなさい。貴女の吸血鬼化が終わるまで聖にはこの部屋で花月さんのお世話をしてもらいます。」



悠夜さん……気をつかってくれているのかな。


「私はそんな優しい人間ではありません。ですが……貴女の心の声が聞こえてしまう今、私は貴女の前で冷静でいられる保証がない。それだけのことです。お大事に。」

「……ありがとう…ございます。」
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