生贄の花嫁      〜Lost girl〜
―悠夜side—

聖に呼ばれ花月さんの様子を見に来た時、彼女の心の声が強く伝わってきた。不安、困惑、痛み、苦しみ……そして聖への特別な思い。


聖以外には家族としての思いだけしかないこと。もう今の私には彼女を守る権利はない。それは聖の役割となり、私たちはただ見守ることしかできない。


「悠夜……花月チャンは…?」
「泰揮、また今までの偽りの自分にもどったのですか……?彼女はもう吸血鬼化が始まっていますよ。」


「花月チャン……本当は聖クンに吸血鬼にしてほしかったわよね…きっと。」


「今回貴方が犯したことは許されることではありません。ですが……私には貴方を咎めることはできない。貴方を追い詰め、間違った生き方を教えてしまった私の責任です。」

「違うわよ。貴方がアタシを助けてくれたことは間違いではなかったし、何度も救われた。本当に感謝しているのよ。それに……本当は花月チャンを襲おうとアタシの中にいた本来の『俺』が考えたとき、アタシにも選択する権利はあったの。きっと花月チャンを傷つけることになる最低な行為だって認識はあったのよ。でも……本当に好きだったから、もしかしたら…って悪魔の囁きに耳を傾けてしまったの。だから、今回のことは全部アタシのせいで起きたことでアタシが悪いのよ。」


「これから……私たちは彼女を見守ることしかできません。彼女への思いも期待も持たず、ただ家族としての存在でしかなくなる。」

「ええ、分かっているわ。でも…アタシはそれでいいと思ってる。たとえ彼女がアタシたちの手の届かない存在になっても大切な子であることに変わりはないわ。今度こそ、本当に親としての役割をこなして、見守り続けたい。だから、また2人で頑張りましょう、悠夜。」

「そうですね……。貴方とならこの気持ちも消化していけそうです。」

「ええ。でも、まずは花月チャンと聖クンに謝ってくるわ。とても傷つけてしまったから。」


「では、私は劉磨たちに全て説明してきます。」





「ありがとう…悠夜。」
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