生贄の花嫁      〜Lost girl〜
―劉磨side―

なんなんだ、どいつもこいつも好きだの愛だの。愛なんて…失うものの方が多いっていうのに。

「おかえり、劉磨。」
「ただいま…つーかなんで家にいるんだよ。泰揮と悠夜は?」


「店番してるよ。私は明け方まで休み貰ったの。そういうあんたは何なの?また、楓ちゃん傷つけたの?」

「またとか言うな。ちゃんとフッてきたんだから。」
「なんでよ、どういうこと!?」

「好きだって言われたからフった。簡単な話だろ。」

「なんでフったのよ。私たちでも分かるくらい楓ちゃんが好きだって気持ちは強かったはずでしょ。劉磨だって好きだったでしょ、いつも嬉しそうにプレゼントを貰ってたじゃない。」

「あいつが…ガキだからだ。」


「ガキってもう20歳になるわけだし立派な吸血鬼………もしかして、楓ちゃんが完全な吸血鬼じゃないから?」


「……そうだ。俺が手を出したら…また柚のときみたいにならないか不安なんだ。それなのにあいつ、体の関係だけでもいいとか言いやがって…。」


楓が俺だけを見てくれていることは分かっている。俺だけに特別で俺だけに尽くしてくれているのも分かっている。だけど…俺はあいつが望む以上のことをしてやれない。柚のときみたいにまた人生を壊しちまう可能性もある。


「私の…せいだよね、劉磨がそんなに臆病になったの。」

「お前のせいじゃない。ただ…俺に覚悟が足りないだけだ。失うくらいなら、壊してしまうならそうなる前に断ち切ったほうがいい。必ずしも聖たちみたいに幸せを掴めるわけじゃない。」

「それはそうだけど…それじゃあ――」




ピンポーン


誰だ、こんな時間に。客人が来るようなやつはこの屋敷にいねえのに。


ピンポーンピンポーンピンポーンピンポーン

「ああもううるさいな!どちら様ですか!?…って琉生……?」

「赤羽先輩…話があります。」


「琉生、俺は楓と帰るように言ったはずだ。送り狼できるようにしてやっただろ。」

「はい。だから報告しに来ました。後で恨まれたくないので。僕は今日、楓ちゃんとHをしました。僕と楓ちゃんは結ばれました。だから楓ちゃんは僕のものなのでもう、楓ちゃんを惑わすようなことはしないでください。」

「ああそうかよ。じゃあお前があいつを幸せにしてやれ。」

「ちょ、劉磨、どこ行くの!」
「部屋。」



ほら、俺じゃなくたって楓は幸せになれるんだ。今まで俺が貰ってたものをあげる相手が変わっただけ。それだけだ。なのに、

「なんで涙が出てくるんだよ……。」
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