生贄の花嫁      〜Lost girl〜
―柚side―

「琉生、わざわざそれを言うためだけに来たの?」

「うん。こうすれば……赤羽先輩は楓ちゃんの有難みを気づくと思ったから。」

「有難み…ね。それに気づいたところで劉磨がどう動くかなんて分からないでしょ。下手すれば貴方が恨まれる。」

「煽るのなんて簡単だよ。特に赤羽先輩みたいな痛みに弱いタイプは。」

「本当はHなんてしてないんでしょ?貴方の心の中の痛みが私には見える。これはフラれた痛み……叶わなかった未練の痛み……?」

「そうだよ。楓ちゃんは僕が赤羽先輩の代わりになることでさえ望まなかった。本当に赤羽先輩のことしか見えてないみたいだから……。フラれたのは僕のほう。たとえ体の関係だけでも……究極なことを言ってしまえば赤羽先輩の犬にでもなれれば楓ちゃんは喜ぶ。」



犬にでも…ね。それを分かっていたうえで劉磨が楓ちゃんをフったのならそれは大人になったと喜んであげるべきか、気の向く時だけ利用でもしてあげれば、と唆すべきか。



「貴方も随分と苦労する立場にいるのね。いいわよ、協力してあげても。」
「協力……?」


「劉磨と楓ちゃんが話し合えるように時間を作ってあげるって言ってるの。琉生くんは楓ちゃんに幸せになってほしいんでしょ?」

「それはそうだけど……話し合わせるなら、ちゃんと2人に許可を取ったうえでにしてください。僕たちが作戦を企てて会わせたところで仕組まれたものとなれば楓ちゃんが傷つきます。」

「別にそれでもいいけど……そうすると劉磨が出てくる可能性は低くなるわよ。」

「それでも構わない。」



「そう、じゃあ明日の21時にこの屋敷でどう?劉磨には私が、楓ちゃんには琉生くんが事情を説明し会うかどうかを問う。もちろんどちらかが来なければその時点で私たちの計画も終わり。」


「分かりました。ではまた明日。」
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