離婚予定日、極上社長は契約妻を甘く堕とす
 いずみは、着々と離婚後の準備を進めていこうとする。そんな様子を見ていると、面白くない。

 ――好きだ。

 ただ最初は居心地の良さや離れがたさだったものが、改めていずみを見つめるようになってから明確な感情の言葉に形を変えていく。

 まるきり、脈がないわけでもない、恐らく。目が合って戸惑う時の薄ら頬が染まるところだとか。困ったように瞳が揺れて、逸れるところだとか。皮肉なことに、見つめるほどに気づけてしまう。

 そのくらいで、と思うかもしれないが。もちろん、普通の女性ならそのくらいで脈ありだとか思われても困ると言われそうだが、そこは対象がいずみだからだ。彼女がそんな動揺を見せることは、あまりない。
 間違いなく『鈍い』『疎い』と思っていたが、実は案外、そうでもないのではないか。

 引っ越し先を探す目的で、彼女をデートに誘った。彼女が、自分を意識し始めているのをひしひしと感じられる。
 その日一日、ただ街を散策するだけの、デートというにはあまりにも健全な時間を過ごす。けれど、彼女の態度が戸惑いながらも自分を受け入れてくれているように感じられた。

 だから、これ以上意味深な行動だけを繰り返すよりも、その日のうちに気持ちを告げようと思ったのだ。

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