離婚予定日、極上社長は契約妻を甘く堕とす

『……あ、良ければ、ご一緒に、どうですか』


 缶ビールを、グラスに注がずそのまま飲んでいるところを見つかって気まずいのか、はにかむような微笑みが可愛らしかった。頬が染まっているのはアルコールのせいだったのかもしれないが、ほろ酔いの笑みはいつも隙の無い彼女からは窺い知れない無防備のもので。


『あー、じゃあ、もらおうかな』


 社交辞令に違いない誘いに乗ってソファに座り、どこかぎこちない時間を過ごした。なんとなく仕事の話を持ち出すのはもったいないような気がして、宅飲みなんて珍しいと話を振ればやっぱり恥ずかしそうな顔をしていたのを覚えている。


『自室ではちびちびと……ちょくちょく』


 それを聞いたから、というわけでもない。一度は向こうからだったのだから、次は自分が誘うべきかと考えたのだったと思う。
 取引先から少々値の張る酒をもらった時に声をかけた。それからは、時々そんな風に酒を飲むようになり、不自然な空気はやがて彼女が持ち掛けたゲームをするようになって和らいだ。
 


『あー! また負けた!』


 負けた時の彼女は、いつもより少し幼く見えて可愛いところがある。だからいつも、つい手加減抜きで相手をしてしまう。そうしたら彼女がムキになるので、必然的に過ごす時間も長くなる。夜遅くまで飲むのを見越して、新しい酒を買い込むのは休前日というのが習慣付いた。

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