離さないで、御影くん
It May Be Destiny.


学校帰り、お昼とはいえ9月末にしては暑い中、最寄り駅まで歩いていた。

土曜ということもあり、人が沢山いる。
騒々しい生活音と話し声。

私に向けられてるわけじゃない。
分かってるけど…どうしても、敏感に音を感じてしまう。

何でイヤホン忘れちゃったんだろう。
バカだなぁ、私。

余計過敏になって、堪えるようにリュックの紐をギュッと握る。


前から、大学生くらいの男性3人がやってくる。夢中になって話していて、ぶつかりそうだ。

私は道の端に寄って歩いていた。

だけど…バンっとぶつかる。
その拍子に、彼が持っていたファストフード店の紙コップが落ち、私は中のお茶が少しかかってしまう。


「あ?ちゃんと周り見て歩けよ!」


え?何でっ?
私よけたのに。
周り見てなかったのはそっちじゃん…。


「……あ、の」

「何だよ、さっさと謝れよ」

「てかさー、弁償してもらおうよー」


仮に、仮に私が1悪くても、彼が9悪い。
何で責められてるの?


「……違っ…」

「さっきから何なん?ハッキリ言えっての」


言葉が、口から出ていかない。
頭では沢山言いたいことあるのに。


俯いてしまっていると、


「寄って集って何してるんですか?」


と、声がする。

ふっと顔を上げれば、私の前にはお兄さんの背中がある。


「……え…?」


驚いてる場合じゃない。


「寄って集ってって…人聞き悪いな。
コイツがぶつかってきたから、謝れって言ってるの。何か悪い?」

「ぶつかってきたのはあなたですよね。俺見てましたけど、彼女はぶつからないように充分端に寄ってましたよ。
不注意だったのは、あなたなんじゃないですか」

「は…?」


図星だったのか、顔を顰めた。


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