翼のない鳥
さて、どうするか。
様子をうかがうような視線がいくつか向けられている。
さすがというか、手は止めていないようだが、分かりやすいんだよ。
・・・もう、なんかめんどくさいな。
人と関わるのはこれだから嫌だ。
1人だったら、こんなどうでもいいことに神経すり減らされることもないのに。
ひとつ溜息をおとして、コトンとマグカップを机の上に置いた。
そのままスマホをとりだし、操作。
3つしかない連絡先の一番上にあるものをタップする。
耳に当てると、待ち望んでいた声はすぐに聞こえた。
「ああ、美鶴?」
名を声に出した途端、部屋の空気が少し緊張したようなものになる。
だから、あからさまなんだって。
「もう来ていいよ。時間潰すのも大変だろ?」
そのまま通話を終了させ、悪魔を連想させる風貌のヤツに視線を向ける。
どうせコイツだろ、言い出したの。
その証拠に、その顔にはへらへらと薄っぺらい含み笑いが。
・・・ああ、くそ。
「で?何をすれば満足なわけ?」
「うーん、そうだねえ・・・とりあえず、そのコーヒー飲みながら話をしようか。」
静流クンのコーヒーはおいしいよ、とすすめてくるのは悪魔。
その代わり、他のメンバーは少なからず動揺したようだ。
あーあ、もう、嫌だな。
グシャリと髪を崩す。
束ねている髪が乱れてハラリと落ちたが、どうでもいい。
「、」
ひとりに、なりたい。
やりきれないなあと、そっと目を伏せた。