愛してるって気持ちだけじゃ届かない
「人それぞれじゃない。好きになったら、その人がタイプなのよ」
「へー…なら、彼氏がいてもタイプなら他の男も好きになるのか?」
彼氏がいながら慧のことを惑わすあの女が、憎らしくなる。
私だったら、慧を誰よりも愛するのに…
だけど、好きでも友達でいることを選んだのだ。
「私は、一途よ」
人の気持ちも知らない慧に腹が立って口調が強くなっていた。
表情が強張る慧を見ると、居た堪れない。
私の方が傷ついているっていうのに…
どうせ、この後、慧は彼女の代わりに小さくて守ってあげたくなるような女を見つけて、お持ち帰りするのだろうと想像がついた。
そんな場面を見てしまう前に…席を立った。
「あんたといると酔えないから、帰るわ」
「なら、俺に声かけなきゃいいだろ」
少しの時間でも、側にいたいからだよ。
バカ…
「1人で寂しそうにしてたから、ついね。じゃあ、またね」
こっちを見ようともしないで、めぼしい女を探すように、後ろを振り向き遠くを見てる姿に、私は、いっときの慰めにもなれない女なのだと悲しくなる。
そして、反対に絶対、慧以上に好きになれる人を捕まえて、新しい恋をして忘れてやるんだと誓うのだった。