愛してるって気持ちだけじゃ届かない

読み取れない表情に、揺さぶりをかけてしまう。

「美和先生も来るのかな?」

遊ばせていた手が止まった。

昔の私なら絶対に、慧の前で出さなかった名前を故意に出した。

しばらくの沈黙の後、どこに視線を向けているのかわからないまま、ボソリと呟いた。

「どうだろうな」

もう、彼女とは一切の連絡を取っていないと確信した私は、内心ホッとしている反面、試すように彼女の名前を出した自分がイヤになる。

「…ごめん」

「なに謝ってるんだよ。もう、何年も前に終わったことだ」

私の頭を小突く慧の表情は、言葉とは裏腹にどこか暗い。

本当に気持ちの整理がついているのだろうか?

今もまだ、心のどこかで彼女と復縁したいと思っていないだろうかと心配になってしまう。

「ふっ、ふふふふ…」

「なに笑ってるだ?」

不機嫌そうに、再び私の頭を小突いていく。

「なんでもない」

そういいながら、慧の腕に抱きつき体を寄せた。

慧の気持ちがどこにあるのかなんて、心配しても仕方ない関係だったと改めて思うと、笑いが出ていた。

セフレだと理解していても、心のどこかで勘違いしていたらしい。

セフレらしく、私から誘う。
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