愛執身ごもり婚~独占欲強めな御曹司にお見合い婚で奪われました~
「菜緒、苦しくない?」
「うん。平気」


私はお腹を気にしてこわごわ回している涼介さんの腕を掴み、しっかりときつく抱きしめ直した。


「私、涼介さんと結婚してよかったなって心から思ってるよ」


私と赤ちゃんのことをなによりも大切に考えてくれて、世界一優しいパパだよね。
私は心の中でそう赤ちゃんに語りかける。


「かわいいこと言うなよ」


うしろで涼介さんは照れたように言い、鼻先を私の後頭部に擦りつけた。


「俺、我慢できる自信がなくなってきた」


手のひらで私の体に優しく触れる。
足や背中、胸のあたりも探るようになでられて、くすぐったくて私は体をよじった。


「ちょ、ちょっと涼介さん!」
「マッサージだよ」


意地悪そうに笑う声が背後から聞こえてくる。
まるで涼介さんの手のひらで触れる部分に明かりが灯るように、温かくなって胸の奥がキュンと疼く。

耐えて足をもぞもぞさせると、お腹の奥が勝手に動いていることに気づいた。
腸がゴロゴロしているのに似ているのだけれど、今までに感じたのとはどこか違う。

胎動は、六ヶ月くらいからよく感じるようになると智美から聞いた。
最初は蹴ったり激しい動きではないから、気づきにくい、とも。

もしかして、これって……。


「やっぱり、動いてるのかも!」


突然の私の大声に驚いたのか、涼介さんの手の動きが止まった。


「え、動いてる?」
「赤ちゃん、動いてるかもしれない」
「え……!」


顔を見合わせた私たちは、しばらく放心したように押し黙った。

触っても、きっとこれはまだ私にしかわからない感触だ。
外から目に見えてわかったり、動きを手で確認できるほどでなはいけれど、たしかに元気に動いてる。

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