愛執身ごもり婚~独占欲強めな御曹司にお見合い婚で奪われました~
「菜緒ちゃん、お母様はお元気?」
「はい、お陰様で元気にしております」
「昔はよく、ママ友同士で集まってお茶したりしてたのよ。楽しかったな」


お母様は懐かしそうに両目を細めた。


「最近は毛利亭にランチに行く機会がなかなかなくて。でも、今度行ってみようかしら」
「はい、ぜひお待ちしております」


お母様の口調も雰囲気も柔らかいので、緊張で強張っていた表情がほぐれていくのが自分でもわかった。


「毛利亭はね、うちのお祖父様も大好きだったんだよ。仕事の会合でも使わせてもらっていたよ」
「ありがとうございます」


お父様も終始和やかに接してくださって、温かい空気が漂っていた。

ご両親がお優しい方々で本当によかった。
小学校の思い出話や毛利亭での仕事の話などで盛り上がった頃。


「けど本当によかったわね、涼介! 初恋の菜緒ちゃんと一緒になれて」


弾むような声で言ったお母様を、私はぽかんと脱力したような目で見つめ返した。

〝初恋の菜緒ちゃん〟?


「そうだな、お前は本当に幸せ者だよ。小学生の頃から思い続けていた菜緒ちゃんがお嫁にきてくれるなんて」


今度はお母様に同調し、唸るように深く頷くお父様を緩慢な速度で見た。

〝小学生の頃から思い続けていた〟……?


「その話はしないでください。恥ずかしいので」


もぞもぞと膝を崩して座り直した涼介さんは、臍を曲げた子どものような口調で言った。


「おや、涼介は照れてるのか?」
「菜緒ちゃん、せっかくだから涼介の部屋でゆっくりしてきたらどうかしら? 夕食の準備をしておくから、あとでご一緒しましょうよ」


ムッとする涼介さんを、ご両親は微笑ましげに見守っている。

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