愛執身ごもり婚~独占欲強めな御曹司にお見合い婚で奪われました~
「おひとり? 涼介は?」


唯子さんはキョロキョロと周囲を見回した。


「はい、今はひとりです。涼介さんはさっき秘書の方に呼ばれて」
「こういったパーティーだと、ひとりでいると主催者に失礼にあたる場合もあるんですよ」
「え……」
「ほら、つまらないのかなって思われるじゃないですか。無理のない程度に、知らない人とも会話した方がいいですよ」


たしなめるように唯子さんは言った。

マナーも知らない、なんて非常識で失礼な人だと思われただろうか。
恥ずかしさと情けなさで顔中が一気に熱くなる。


「そうですよね……すみません、ありがとうございます!」


ガバッと勢いよく頭を下げ、上げた瞬間にまた目眩がした。
髪を振り乱すくらい大げさな動きだったから、足もとの高いヒールがバランスが取れずにふらついた。


「大丈夫ですか? お座りになります?」


唯子さんがすかさず私の肩に手を寄せる。
支えられている場面で、ちょうど涼介さんが戻って来た。


「菜緒、どうした?」


私たちのもとに小走りで近寄った涼介さんは、心配そうに窺う顔つきで言った。


「ちょっと目眩がして」
「人の多さに酔ったかな。大丈夫か?」
「はい、唯子さんが支えてくださったので」


迷惑をかけて申し訳なくて、私がペコリと頭を下げると、涼介さんは唯子さんに目配せをする。
まるで目と目だけで会話するように、唯子さんはただ頷いた。


「ちょっと座って休もうか、顔も赤いようだけど」
「ごめんなさい、大丈夫」


今度は涼介さんに背中を支えられ、私は会場の後方にある椅子に向かった。

唯子さんにもう一度礼をして立ち去る間際。


「涼介、パーティー慣れしてない彼女から目を離しちゃダメよ」


非難めいた声で唯子さんが言った。
周りのゲストにも聞こえるような大声だった。

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