愛執身ごもり婚~独占欲強めな御曹司にお見合い婚で奪われました~
俺はある程度マンション建設に自分の意見が通る、目標としていた専務の地位に登りつめ、毛利亭に菜緒とのお見合いを直談判しに行った。

母親同士が仲がよかったのもあり、菜緒のお母さんが俺を覚えてくれていて、ちょうどそろそろお見合いでもセッティングしようと考えていたの、と打ち明けてくれた。

恐らく菜緒があの河本とかいう料理長に失恋し、毛利亭の雰囲気が暗くなっていたのだろう。
料理長に恋をしていたのは想定外でショックではあったが、俺としては渡りに船だった。

俺の夢は、菜緒が住みたいマンションを建設して菜緒と一緒に住むことだ。
小学生の頃、将来の夢を描いた絵を菜緒が褒めてくれたのがうれしかった。

あの頃は御曹司の重圧に押し潰されそうになり始めた歳で、よく知らない周りの大人から発破をかけられたり、勝手に敵視されたり案じられたりと、自分の決められた人生のレールに嫌気がさしていた。

周りの大人たちも友だちも、先生だって、俺を〝月島の御曹司〟というフィルターを通してでしか見ていない事実にも絶望していた。

けれども、菜緒は違った。
俺を特別扱いしなかったし(ただ単に俺に興味がなかっただけだろうけれど)、俺に対して自然に接してくれた。

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