愛執身ごもり婚~独占欲強めな御曹司にお見合い婚で奪われました~
「八週に入ると、このくらいまで成長しているといいですね」


先生から、子宮の中で胎児がどのように成長するかのイラストが描かれた紙を渡され、私は食い入るように見つめた。

予定日はまだ赤ちゃんの頭からお尻まで大きさを測ってから、だいたい十二週までにはっきりわかるそうだが、二月の下旬頃になる。

これから約十一ヶ月、お腹の中で共に過ごす日々が始まっているのだ。


「つわりはどうですか? 早い方だともう始まってるかもしれませんが」
「はい。朝から吐き気が続いて頭痛もあり、食欲があまりなくて」
「食べれるものを少しずつでも大丈夫ですよ。つわりは辛いですけど、赤ちゃんが順調に育っている証拠だと思ってください」


先生の言葉に私はハッとした。

辛いばかりじゃなくて、赤ちゃんの成長を喜ぶ方に考えを変えればいいんだ。


「最低限水分だけは、必ず摂るようにしてくださいね。あまりにお辛いようでしたら、いつでも病院に連絡してください」
「はい、ありがとうございました」


次は二週間後に予約をして、私と涼介さんは先生に一礼し、診察室を後にした。


「よかった、赤ちゃん元気だった……」


診察室を出て、待合室で会計を待っている間も私は頂いた超音波写真をずっと眺めていた。
まだどこが頭で、どこが手足かわからない状態だけれども、いつまでも見ていられる。


「本当によかった」


感情が籠もった低い声で、涼介さんがつぶやいた。
私の頭をポンとなで、顔を見合わせて優しく微笑む。

受付で会計を終え、私たちはスーパーで食材の買い物をして帰宅した。


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