熄えないで
08.弱虫の脱却






「え、二千花、後夜祭誰かと約束してるの?」

「う、うん…ちょっとね」



クラスの模擬店の片づけを一通り終えたのは16時を少し過ぎたときのこと。

16時半からグラウンドに全校生徒が集まって後夜祭がスタートする。


私は、警察官のコスプレをやめて制服に着替え、まだ少しだけ模擬店の名残が残る教室にいた。

メイとレナに「先約がいるの」と伝えると、彼女たちはわかりやすく悲しそうな顔をした。
きっと、私と成川くんの間にあった出来事のことを聞きたかったのだと思う。


吉乃くんと約束していることは、なんとなくまだ言えなかった。……まあ、見つかっても何も支障はないし良いんだけど。



「わかったぁ」

「うん。ごめんね」

「あ。てか二千花、明日とかあいてる?」



メイが言った。

文化祭は土日を使って開催されたので、明日から2日間は振替休日になっている。


双子は学校が違うから通常通り学校があるし、なによりも圧倒的友達の少なさを誇る私に、振替休日の予定があるわけがない。


「空いてたと思う」と言えば、メイとレナは嬉しそうに笑った。


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