熄えないで



.
.


11時9分。

電車がホームに到着し、プシュー…とドアが開いた。

前から2両目に乗り込み、そしてすぐ、彼の姿を見つけた。


サックスカラーの大きめのシャツのなかに白いTシャツを着て、黒のワイドパンツにマスタード色のスニーカーを指し色で合わせている。


…お洒落だ。そして似合っている。




「吉乃くん、」

「あ。こんにちは先輩」



座っていた吉乃くんのところに向かうと、彼は柔らかい笑みを浮かべて挨拶をした。

平日の昼前だからか、車内はかなり空いていた。
「隣どうぞ」という彼に頷いて腰を下ろす。




「先輩、古着好きなんですか」

「あ、…うん」

「良く似合ってます。かわいいです」

「かっ、」



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