不眠姫と腹黒王子

円side:2日目の夜





「俺、ジュース買いに行ってくるよ。」

「え?」

見上げると、仮面のような笑顔の宮。

「いや、せっかくだし罰ゲームで…。」

「最初に買うって言ったの俺だし。
円もここにいて。」


宮は配られかけたカードを放って、
立ち上がって外に行ってしまった。


「わ、私も行ってくる。」

「えっ、円ちゃん?」


クラスの男子が私の名前を呼んだけど、
聞こえない振りをして部屋のドアを閉めた。


「宮…私も!」

外に出ると、宮はまだ近くにいた。

「静かにしろ。男子階だぞ。
お前は戻ってろよ。」

淡々と言い切る宮に少し鳥肌がたつ。

「待って、じゃあこれだけ。
ジャージ。やっぱり今返すよ。」

部屋から持ってきていたジャージの入った袋を
宮に差し出した。

「今日もいるだろ。」

「いや、さすがに私キモすぎて…
もう着て寝られないよ。」

「いつもキモいだろ。」


あれ、変だな。
普段だったらもっと冗談っぽさがあるのに…。

なんか…突き刺さる…。


「み、宮…本当に返すね。ごめんね。」

「『ごめん』?
謝るくらいだったら、録音データ消せよ。」

「えっ…」


振り返った宮は冷たい目をしていた。

薄暗い廊下の中で、その目が私を見下した。


あ。


私、今

軽蔑

されてる。


心臓が嫌な音を立てて、私を叩いた。


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