不眠姫と腹黒王子




「どーしたの…?」

震えそうになる声を必死にまっすぐ保つ。

「どーしたの、じゃねぇよ。
忘れたの?お前、俺のこと脅してるんだろ。」

「いや、そ、そうだけどさ。
でも…私たち友達になって…。」

「友達ね。そうだけどさ、
俺はお前なんか嫌いだよ。」

「え…」


待って。
宮、言ってたよね?
私のこと割と好きだって。

あれ、嘘だったの…?
やっぱり、からかわれてただけだったんだ…。


「俺がお前に本当の厚意で協力してると思うなよ。」


宮の冷たい視線と声でそう言われ、
動揺する自分に気づいた。

『寝るな』

心は
凍る。

『寝るな寝るな』

あぁ。さっきはあんなに嫌だと思っていたけれど、
私の心が凍っていて良かった。

『寝るな寝るな寝るな寝るな』

心を

殺せ。





「そうだったね。うん、わかった。」


私はジャージの入った袋を宮に押し付け、
きびすを返して階段に向かった。

早歩きで去る私を宮は追いかけない。
私も早歩きをやめない。

私たちはそういう関係だ。契約だ。


だからいいんだ。

気づき始めていた私の小さな感情も。

あなたへの親愛の情も。

凍らせる。
閉じ込める。
いつか切り刻まれても、少しも傷つかないくらい

固く 固く。


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