不眠姫と腹黒王子



**

目が覚めたら夕方だった。

学校…サボってしまった…。


少しの罪悪感とスッキリした気分の中リビングに行くと、テーブルの上に置き手紙があった。

『おはよう。
学校には今日は休むって連絡しておいた。
食べれるなら食べなさい。』

横には、真ん丸いおにぎりとサラダと黄身の固まった目玉焼き。
私の表情は自然と緩んだ。


ピンポーーン

インターホンを鳴らしたのは結だった。


「おはよう。」
ドアを開けてそう言うと、結はホッとしたような顔をした。

「円…おはようって…寝てたの?」
「うん。昨日眠れなくて。
でも昼間いっぱい眠れた。」
「そっか。よかった…」
「心配かけてごめんね。」

結は「ホントだよ!」と言ってようやく笑ってくれた。


結を家に上げ、私は朝ご飯を食べ始める。

「お父さんが作ってくれたの?」
「うん。食べる?」
「ううん。もうすぐ夜ご飯だし!」

結はお茶を何度も口へ運び、
ソワソワと何かを言いたげにしている。

「昨日ね…」
「うん!!」

私が話し始めると、すごい勢いで食いついてきた。
やっぱり昨日の話が気になってたんだ。

「宮と一緒に帰ってね」
「うんうん!」
「私の最寄り駅まで送ってくれたの。」
「おお!」
「そんでキスされた。」

「へ……」

「でもなんか…「えええええええぇぇえ!!」

私の話は結の大声でかき消された。


「きっ…キスって…!
なんでそんな急展開!!?
付き合うことになったの!!?」

「違うよ。」

落ち着いて否定する私に結もだんだん落ち着きを取り戻していく。


「じゃあどうして…」
「キスしたあと、宮すごく嫌そうな顔してた。
だから…宮の気持ちが分からなくって昨日眠れなかったの。」
「嫌そうな顔?」
「うん…。」


バレンタインデーに、私は私の『前』を決めた。
自分の気持ちのままに、今までおし殺してきた分も生きること。
つまり恋人として宮のそばにいること。

昨日の朝、結にそう告げると、自分のことのように喜んでくれた。


「そっか…。それはなんかモヤモヤするよね。」

結はうーんと唸りながら頭を捻った。


< 210 / 231 >

この作品をシェア

pagetop