寵愛紳士 ~今夜、献身的なエリート上司に迫られる~
小山の想像を絶する口の軽さにも驚愕したが、それよりも噂の話に唖然とした。
(これのせいか……)
雪乃に避けられているのはこの写真が出回っているからに違いない。
知らなかった事実に戸惑うも、早く彼女をフォローしてあげたくてたまらなくなり、すぐにスマホのメッセージ画面を出した。
「あ! 課長、まさか本当に別れませんよね?」
小山が手を伸ばし、晴久のスマホを持つ手を掴んだ。
「なんで別れるって話になるんだ」
「だって、高杉課長ってこうやって噂されるの大嫌いじゃないですか。見つけたやつが盗撮したからこんな写真が出回ってるわけだし。こんな面倒事になるなら恋人と別れて、静かな暮らしに戻りたいのかなって」
頭の片隅にもない仮説に、「はあ?」と声が出る。
「そんなわけないだろう」
「よかった! さすがに俺が口滑らせたせいで別れるなんてなったら嫌なんで。課長、彼女さんのことちゃんと好きなんですね」
小山に指摘されたせいで、晴久は初めて、噂されていることについて自分が全く気にしていないと気付いた。
以前の自分ならこうではなかったかもしれない。面倒で投げ出していたに違いなかった。
しかし今は、周囲など気にならない。
女性に追い回されたくなくて徹底的にプライベートを隠していたはずのに、恋人の存在を知られることになんの嫌悪感もない。雪乃が彼女であると、自分はいつ公にしても構わない。
(雪乃のことしか考えられない。彼女にしか、興味がない)
五年前のあの事件から、こんな気持ちになるのは初めてだった。