寵愛紳士 ~今夜、献身的なエリート上司に迫られる~

「おはよう、雪乃ちゃん。今日も全身真っ黒だねぇ」

着席した彼女のそばにやって来たのは、同じく総務部の三つ年上の社員である、相葉皆子(あいばみなこ)

雪乃とは対照的な、社内規定ギリギリの茶髪を柄物のバレッタで留めており、体のラインにフィットしたビジネスカジュアルはこのまま合コンにでも行けてしまいそう。

意外にも、彼女は雪乃が一番慕っている姉御肌の先輩である。

「おはようございます皆子さん。今日早いんですね」

雪乃は人懐こく笑ったが、せっかくの笑顔もマスクつけたままでは分からず、眼鏡の奥で目が細くなるのがかろうじて確認できる。

読み聞かせに適したようなかわいらしい声が、アンバランスに響いていた。
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