寵愛紳士 ~今夜、献身的なエリート上司に迫られる~
「自意識過剰だと思われてしまうかもしれませんが……こうしていれば、男の人から話しかけられることもないので」
晴久はうなずいた。
「いや、過剰ではないと思いますよ。男は細川さんのことを放っておかないでしょう。今まで声をかけられることも多かったのでは?」
「そうなんです……。あの、高杉さんは、どうして眼鏡とマスクを?」
晴久も理由を言い淀み、首の後ろをかいた。しかし彼女は正直に明かしたのだから、と決意して白状する。
「俺も同じです。自分で言うのもなんですが、素顔でいると女性に必要以上に干渉されてしまうので隠しています」
「あ、やっぱり……。高杉さんのお顔、女性は皆好きだと思います」
「……あ、ありがとうございます」
気恥ずかしく、ふたりして視線を逸らし妙な空気が漂う。
皆というなら、雪乃はどうなのか。晴久はそれが気になったがもちろん聞くことはできない。
遠回しに素顔を誉め合う形となるも、お互い様なのでふたりともこれ以上掘り返すことはしなかった。
話すたびに雪乃の髪からシャンプーの香りが漂ってくる。
このまま隣り合っていては精神衛生上あまり良くないと思い始めた晴久は、もう寝ようと決意した。
「寝室ですが、よければベッドを使って下さい。毛布は新しいものを出します。シーツは週末に洗ってありますが……嫌でなければ」
晴久はリビングの戸の向こうの、八畳の寝室を指差した。