寵愛紳士 ~今夜、献身的なエリート上司に迫られる~
三階建てのミツハシデンキでは、雪乃が人の多い二階のコーナーで立っていた。
パソコンやテレビがずらりと並び、チカチカと同じ映像が流れている。
若いカップルや主婦、サラリーマンなど店内には多くの客がいるが、一階へ降りるエスカレーター近くで立っている男のせいで戻ることができない。
そこを通りすぎてエレベーターへ乗ることも恐怖だった。
ひとりで立っている私服の男は、この電気屋の中で雪乃に付きまとっていた。
見た目はごく普通の若い男。
最初は思い過ごしかと思っていた雪乃だが、立ち寄ったフロア、商品を眺めた棚で、やたらとその男が目に入った。
確信したのは、隣に立たれたときに肩が触れ、わざと離れてもくっつけてきたとき。
「はっ……はっ……」
拒否反応とも言える呼吸の乱れが起こると、男の行動はエスカレートした。視界に入り込んできたり、恐る恐る様子をうかがうとニヤリと笑ったり。
ついにエスカレーターの前で待ち伏せをされ、雪乃は帰ることができなくなったのだ。
『着きました。どこにいますか』
繋がったままの晴久にすがるように、「二階です」と答えた。
迷惑をかけるわけにはいかないと来てもらうつもりはなかったのに、エスカレーターを上がってきた晴久の姿を見た途端、彼女は安堵のあまり涙があふれた。