寵愛紳士 ~今夜、献身的なエリート上司に迫られる~
晴久と雪乃は開かれた道を堂々と突破し、店の外に出た。
しばらくは恋人のふりをしたまま歩き続け駅へと戻り、そこでやっと体を離す。
「ありがとうございました。また高杉さんにご迷惑をかけてしまって……」
「いえ。細川さんこそ、怖い思いをされたでしょう。でもなぜあんなところに?」
「私のアパートの電気が切れているので、買いに来たんです」
「……そういえばそうでしたね」
電気の件を失念していた晴久は、余計に自分が許せなくなった。
「お店のトイレに入ったときマスクを外したんです。それをそのまま忘れてしまって、戻ったらもう捨てられていて。仕方なく無いまま買い物をしたんですが……しばらくして、あの人につけられていることに気付いたんです」
「そうでしたか」
(あんなに冷たいメッセージを送らなければ、電気屋へ行くと俺に話してくれたはず。自分のことばかりで彼女に対する気遣いができなかった。細川さんがこんな目に遇ったのは、俺のせいも同然だ)
責任を感じ、晴久は奥歯を噛む。
ふたりは並んで改札を通り、ホームに並んだ。
かろうじてラッシュの時間は過ぎており、人はまばらだった。
「それで、買い物は?」
鞄以外に荷物のない雪乃に、一応尋ねてみる。
「……買えませんでした。買う前に、ああなってしまって」