寵愛紳士 ~今夜、献身的なエリート上司に迫られる~

◇◇◇◇◇◇◇◇

その夜、十時。

雪乃は黄色いパジャマに着替えて脱衣所を出ると、ソファで待つ晴久のもとへ戻った。

「高杉さん。お風呂あがりました」

「あ、はい」

ホカホカと湯上がりの雪乃はすっかり落ち着き、晴久の隣へ座る。

ふたりはここへ来る前に雪乃の家に寄り、泊まりに必要な荷物を持ってきてから晴久の家へ、昨夜とまったく同じ手順をとった。

雪乃が先にシャワーを浴びたのも、昨夜のとおり。

しかし、晴久は昨夜よりも余裕を隠せずにいた。
同じ会社であることも判明し、お互いにもう隠し事はなにもない。自分のトラウマすらもさらけ出し、彼女とのわだかまりが無くなった。

新たな関係へとステップアップしたことで、彼女が昨日より、さらに魅力的に見える。

そんな彼女と今夜も一緒に眠るのだ。

「俺も入ってきます」

「はい」

シャワーを浴びると、少しだけ冷静になった。

まだ付き合っていないのに手を出すような真似は硬派な晴久には決心がつかず、かといってこの状況で付き合いを申し出て下心だと思われるのは心外である。

なにより、雪乃はついさっきトラウマを呼び起こすような怖い目に遇ったばかりであり、そんな彼女につけ入るようなやり方はしたくなかった。
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