寵愛紳士 ~今夜、献身的なエリート上司に迫られる~
「細川さんが無事で俺もよかったです」
さあ、もう寝ようと自然に彼女に背を向けた。
「……あの。高杉さん」
しかし雪乃は話を止めず、晴久は自分の理性が不安になってくる。
「私に敬語を使わなくてもいいんですよ。なんだか上司と部下って感じがして寂しいです。もちろん私は部下ですけど……出会ったのは、会社じゃないですから」
「え……? いや、それは……」
突拍子のない提案に、またゴロンと彼女へ体を戻す。
「呼び方も〝細川さん〟より、〝雪乃〟の方が嬉しいです」
なにを言い出すのかとギョッとした晴久だが、雪乃はあくまで真剣な表情だった。
(……もしかして)
やがて晴久は彼女が自分を〝女性社員〟だと意識しないように気遣ってくれているのだと気付いた。予想外のかわいさに感動さえわいてくる。
(なんていい子なんだ)
彼女に対する好奇心が止まらず、さっそく善意にあやかってみる。