寵愛紳士 ~今夜、献身的なエリート上司に迫られる~
晴久のことは誰にも話す気がなかった。
もし彼に泊めてもらっていることが誰かに知られたら、女性に騒がれるのが苦手な晴久に迷惑がかかる。
女性関係で苦労した経験のある彼に二度と同じ思いをしてほしくない。
(ごめんなさい、皆子さん)
皆子を疑ってはいないものの、彼のためにも情報をもらすべきではない、雪乃はそう決めていた。
しかし、次に皆子から「もしかして、好きな人でもできた?」というピンポイントの質問をされると、思わず顔が赤くなる。
「あー、雪乃ちゃん図星?」
「あっ……いえ、違っーー」
「嘘つくの下手! 絶対好きな人できたんじゃん! 誰!? どこの人!?」
皆子の声が周囲に聞かれるのを恐れ、慌てて「わー! わー!」と自分の声を重ねた雪乃だが、そのせいで彼女の言い分が図星であると証明してしまった。