寵愛紳士 ~今夜、献身的なエリート上司に迫られる~
晴久は隣にいる雪乃を見て、また顔が熱くなってくる。
料理をしてほしいと思っていたわけではないが、この容姿で家庭的な部分まで見せられてはいよいよ惚れ直す要素ばかり。
両思いだという事実を知っているのにこの状況を保っているのは、もう我慢の限界だった。
「……雪乃」
抑えきれずにそう呼んでみると、彼女は無垢な瞳で「はい」と振り向く。
晴久はソファで距離を詰め、彼女の瞳に映りこんだ。
「高杉、さん……?」
「それさ、気になるんだ。俺は雪乃って呼んでるのに、そっちは〝高杉さん〟じゃおかしいだろ。晴久って呼んで」
「えぇ!? で、でも……一応、会社では上司、ですし……」
亀のように肩をすぼめながら、雪乃は真っ赤になっていく。
晴久は彼女の手を握り、身を乗り出した。
恥ずかしくて後退りをする雪乃を逃がさず、フッと笑みを落とす。
「今さら何言ってるんだ。こんなの、ただの上司なわけないだろ」