寵愛紳士 ~今夜、献身的なエリート上司に迫られる~
時計の針の音がしているのに、雪乃は時が止まったかのように固まった。
ふたりは見つめ合う。
雪乃は焦りの目、晴久は「そうだろう?」と念を押す目をしていた。
強気に迫る晴久に翻弄されながらも、雪乃の視線は次第に熱くなっていく。
〝こんなのただの上司と部下の関係じゃない〟
言葉にされたことで、感動と緊張が走った。
「……晴久、さん……?」
雪乃は掠れた声で、恐る恐るつぶやいた。彼の下の名前を初めて口にしてはみたが、もうそれどころではない。
晴久は彼女の頭を撫で、ささやいた。
「よくできたね」
雪乃はカタカタと震えながら、「え……え……」と混乱ぶりを露にする。
(真っ赤。かわいい)
彼女がゆでダコのようになっていく様子が愛しくて、晴久はクックックと笑った。
「あの……私、国語力が乏しくて申し訳ないんですが……それって、つまり……」
「つまり?」
彼女と額が触れそうなくらい接近し、続きを誘う。
「ですから、つまり……晴久さんは、私のこと……。あれ? いえやっぱり、私の勘違いだったかも……」
そろそろ彼女は混乱して限界だと察した晴久は、眉を緩めた笑顔になり、雪乃と額をくっつけた。
「合ってるよ。……ごめん、少し意地悪し過ぎたな。あんまりかわいくてさ」
「晴久さん……」
「雪乃が好きだよ。付き合ってほしいと思ってるんだけど、大丈夫?」
感動で涙を溢す雪乃に対し、YESを確信している晴久は返事がくる前に彼女を抱きしめた。
戸惑っていた雪乃も、そわそわと腕を背中へと回し、やがて晴久の胸にすがり付く。
「私も、好きです……」
雪乃の心の底からの言葉が、胸の中でじんわりと響く。