不眠姫と腹黒王子~番外編~



ダダダダダッ…

バン!!


騒音を立てながらリビングに戻ってきたのはもちろん兄ちゃん。


俺は何もなかったように、またソファに座り直した。


「宮~」

円さんは兄ちゃんにパタパタと駆け寄っていく。


ほらな。
どうせ女なんて、彼氏の前じゃ弱い子ぶる。

さっきのもちょっと天然キャラ演じただけだろ。

今に「弟くんに襲われた」とかチクるんだ。


「円、なんもされてねぇだろうな。」

「え、うん。」

『うん』!!?

「そんなことより」

『そんなことより』!!?

「宮、髪乾かさないと」

どーーーーでもいいわ!!


え?
本当に本気?

この人、ガチで病んでる系?


「あー、慌ててたし。」

「エヘヘ。」

「何笑ってんだアホ。
乾かしてくる。」

「あ、待って。」


兄ちゃんは久々に見る穏やかな顔で振り返った。

心から円さんが好きなのが、気持ち悪いくらい伝わる。


円さんは無表情のまま言った。

「私が乾かしてあげる。」


「…兄ちゃん!!!」


俺の大声に反応して、
兄ちゃんはキョトンとした顔でこちらを見た。

円さんの目はギラギラ光っているように感じる。
なんか怖くて見れないけど。


「危ない…よ?」

「危ない?何が?」

「その…」
その女、変態だぞ。

「……。」


俺が黙っていると、兄ちゃんはプッと吹き出して笑った。

こんな楽しそうな兄ちゃん見るの久々だ。



< 12 / 19 >

この作品をシェア

pagetop