激愛~一途な御曹司は高嶺の花を娶りたい~
珍しい苗字でもないので、まさか彼だとは思わなかった。


彼の顔を見た瞬間、別れたときのことが鮮明によみがえってきて胸が苦しくなる。


『お前は仕事と俺とどっちが大切なんだ。俺は真剣に結婚も考えてるのに、花の話ばかり。俺がどれだけ傷ついてるかわかってるのか? 花のことしかわからない欠陥人間だな』


そう冷たく言い放たれて固まった。


たしかにあの頃は、念願のフローリストになれて楽しくてたまらなかった。

私にしてみれば、恋も仕事も頑張りたい時期だったが、ふたつ年上の彼は私に大切にされていないと感じていたのだろうと今では理解している。

けれども『欠陥人間』という言葉には深く傷つき、それから太一さんに出会うまでは、恋なんて考えることすらなかった。


苦い経験を思い出したくないのでできれば再会したくなかったが、これは仕事だ。

新婦に余計なことを勘づかれないようにとっさに笑顔を作り、名刺を取り出した。


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