激愛~一途な御曹司は高嶺の花を娶りたい~
たったそれだけのことで様子がおかしいと察したの? 
彼が起きてきて、まだ十五分も経っていないのに。


「紬」


彼は私の顎に手をかけ、視線を合わせる。


「花に相談するくらいなら、俺にして」

「……そうですね。でも、装花の件で頭がいっぱいだっただけです。もし困ったら、太一さんに聞いてもらいます」

「うん」


彼はもう一度キスを落とすが、どこか心配げだった。


「行ってきます」
「行ってらっしゃい」


過去を引きずっていてはダメだ。
太一さんが心配する。

旦那さまが私を認めてくれているのだから『欠陥人間』とさげすまれたことなんて気にしなければいい。

フローリストとしての仕事を淡々とこなすだけ。


「よし」


エントランスを出てからマンションを見上げる。
太一さんが見ていてくれる気がしたからだ。


「行ってきます」


高すぎて階層を数えることもままならないので、小声でもう一度告げてから歩きだした。
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