氷の美女と冷血王子
その日1日スケジュールに追われ忙しく過ごした俺は、外が暗くなってからやっと息をつくことができた。

時刻は夜の8時。
さすがに麗子だってもう帰っていることだろう。
あいつのことだから、今日調べたことを喜々として報告してくれるはずだ。

「さぁ、帰るか」

俺は玲子の作る夕食を楽しみに帰り支度を始めた。
その時、

トントン。
「はい」

こんな時間に誰だろうと部屋の入り口を見た瞬間、意外な人物に俺は固まった。

「もう帰れるのか?」

「まあ。それより、どうしたんですか?」

そこにいたのは、父さんだった。

「母さんがさっきからやかましく連絡をしてくる。お前、昨日も帰ってないんだろ?どんなに忙しくても電話ぐらいはできるだろうが」

あー、忘れてた。昨日からひっきりなしに連絡が来ていたんだった。
28にもなって過保護だとは思うが、出張から帰ってくる俺を母さんも待っていたわけだ。

「どうした、何か都合が悪いのか?」
困ったなって顔をした俺を父さんが見ている。

普段母さんが過干渉な分、父さんはあまり子供に干渉してくる事は無い。
子供の頃からずっとそうだった。
だから、こんなふうに会社の中で声をかけられるのは本当に珍しい。
母さんがよっぽどうるさく言ったってことだ。

さぁ、どうしたものかな?
昨日一昨日と消息がつかめなかった俺のことを心配する母さんの気持ちもわからなくはないが、できることなら麗子のもとに帰りたい。

「よほどの用事がないのなら母さんに顔を見せてやれ」

「・・・わかりました」

父さんにここまで言われては、逆らうことはできない。
仕方ない今夜は家に帰るか。

麗子にはメールをしておこう。
きっと分かってくれるだろうから。
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