氷の美女と冷血王子
徹のお陰で昼過ぎに会社を出ることができた俺は、まず都心のマンションへと向かった。

そこは昨日の朝麗子と別れた場所。
麗子のばあさんが管理しているという分譲マンション。
何もなければ、昨日の夜もそこで俺を待っていてくれるはずだった。

ガチャッ。

昨日出かける時に、「入れ違いになるとイヤだから」とスペアキーを渡されていた俺は、すんなり部屋まで入ることができた。

しかし、そこに麗子の姿はなかった。

部屋の中も散らかった様子もなく、だからといって綺麗に整理整頓された感じでもない。

テーブルの上には調べていた資料が積まれているし、キッチンのシンクに使用済みのコーヒーカップが置いてある。
きっと、後から洗うつもりでキッチンまで持っていって出かけたんだろう。
俺が出かけるときに回っていた洗濯機の中も、乾いた洗濯物がそのままになっている。
それに、よほど急いで出かけたのかルームウエアがソファーにかけられていた。

最後のメールで『夕方から出かける』って行っていたから、その時かもしれない。
そうすると、丸一日帰っていないって事で・・・心配だな。
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