氷の美女と冷血王子
表面上の情報をいくら集めてもなかなか見えてこなかった事実も、少し危険を冒して探ってみればわりと簡単に糸口が見つかったりもする。

まず、河野副社長と東西銀行はかなり親しい間柄らしく、ここ数年で受けた融資についての審査がかなりあまい。
私は銀行の融資の基準に詳しいわけではないけれど、他の事例と比べてみても『よくこれで審査が徹ったなあ』と感じるものが多かった。
そして取引そのものも、やたらと仕入れ値が高かったり、納入金額が低かったり。要はうちがもっと利益を上げられるのではないかって思う取引ばかりだった。
もちろん、取引をする上では単純に利益のことばかり言っていられないのも事実。これから先の関係や、その時の状況も踏まえて利益を削ることだってあるだろう。
しかし、それだけではない気がした。

ピコン。
孝太郎からのメール。

『麗子、危ないまねするなよ。徹の話だと、河野副社長の行動にはまだ裏があるらしい。気をつけろ』
『分かってる、大丈夫だから』

心配性な孝太郎を納得させるために返事をしてみたけれど、実際にはとことんまで突き詰めてやろうと思っていた。

前回は私の詰めが甘かったために河野副社長を弾劾できなかったから、今度こそ絶対にって思いが強い。
どんなことをしても尻尾をつかむ。
私はそう決心した。
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