氷の美女と冷血王子
昨日の朝、孝太郎が仕事に出かけてからも私は河野副社長について調べ続けていた。
探って行くにつれて疑問点は増えるばかりだったし、一見何もないように見せかけているのも返って怪しく思えた。
かといって、あの河野副社長が簡単に尻尾を出すはずもなく、正攻法で攻めても限界なのもわかっている。

「さあ、どうするかな?」

集められるだけの状況証拠を集めて、後は徹と孝太郎に任せるって方法もある。
その方が安全だし、確実なんだろうとも思う。
けれど、それには時間がかかるし、1人でも多くの人が関わることで河野副社長に気づかれてしまって証拠を隠蔽されてしまうリスクもある。
それに、孝太郎や徹に危害が行くようなことは絶対に避けなければいけない。
そうなれば、答えは1つ。
私が1人で動くのが一番安全で、早くて、もしもの被害を最小限に抑えられる。
なんて言ったって、私はもう専務秘書でもないし、私の行動をネタに孝太郎が脅されることもないんだから。

「よし、じゃあ、できるところまでやってみますか」

きっと孝太郎に知られれば、鬼のような顔で怒られることだろう。
それでも、今はこれが最善策。
私は自分に言い聞かせて、非合法な手段での情報収集を始めた。
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