氷の美女と冷血王子
怒濤の救出劇
荒らされた麗子のマンションで、俺は呆然と立ち尽くしていた。

一体何が起きたのか?
麗子はどこにいるのか?
わからないことは山のようにある。

「孝太郎・・・」
駆け込んできた徹がこの惨状を見て絶句した。

「悪いな、忙しいのに」
「バカ、そんなこと言っている場合か」

この部屋の荒らされた様子を見た俺は、警察に連絡する前に徹に電話をした。

もちろんこれは犯罪だし、麗子の安否がわからない今警察に届けるべきだのは分かっているが、それを躊躇ってしまう思いもある。
もし、この件に河野副社長がからんでいてすべてが公になれば、鈴森商事自体も大きなダメージを受けることになるだろう。
だから、俺は徹を呼んだ。

「麗子との連絡はつかないままか?」
「ああ」

「あいつは何を調べていたんだ?」

下着から書類や食料品まで、あらゆるものが床に放り出されている部屋の中を見て回りながら、徹は何かを確認している。

「麗子は、河野副社長と東西銀行との癒着や、新規の事業先との関係を調べていた」
「で、何かつかんだのか?」

「それはわからないが、何か証拠を見つけたと言っていた。それに、昨日は夕方から出かけるとも」
「ふーん、昨日かあ」
一瞬、徹が天を仰いだ。

やっぱり俺のせいだ。
昨日無理してでも麗子の元に帰っていれば、もっと早く事態を把握できた。
俺の気づくのが遅かったせいで、もしも、もしも麗子に何かあったら、俺は立ち直れないかもしれない。
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