氷の美女と冷血王子
「ママの話だと、麗子の奴最近あまり寝られてないらしい。そのせいで食事も進まないらしくて、ママも心配して」

「やっぱり、どこか悪いところでもあるんじゃないのか?」
俺の言葉を遮るように身を乗り出してくる孝太郎。

麗子のことが心配でどうしようもないのはよくわかるんだがな。
その気持ちがお互いに一方通行しているのが問題だ。

「違うと思う。一番はストレスじゃないか?」

「ストレス?」

「ああ。あれだけの怖い思いをしたんだから、しばらくは調子も悪くなるだろう。それに、」

「それに?」

問い返された言葉を聞いて、俺は孝太郎の顔を見た。

「なあ、孝太郎。お前はこのままでいいと思っているのか?」

「どういう意味だよ」

はあー。こいつどこまで鈍感なんだ。

「麗子との関係が終わってもいいのか?」

「しかたないだろう」
言ったきり、プイッと視線を外した。

その態度に、俺の方がイラッして、

「じゃあ、早く後任の秘書を付けろ。麗子の近況もいちいち聞くな。俺はお前の使いっ走りじゃない」
少しだけ声が大きくなってしまった。

「分かった。秘書はいらない。お前が忙しいなら外出の同行も着けなくていい。1人で行く。それに、麗子のことも・・・」
強気で言い出した孝太郎だが、麗子のこととなって尻すぼみになってしまった。

「もういい。俺も言い過ぎた」

孝太郎が麗子のことを心配しているのは分かっている。
2人とも不器用なだけだと理解はしているんだが・・・

はあー。
自分を落ち着かせるために、深呼吸を1つした。
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